どんたむれんじゅ blog

「どんたむ焼きと絵本 どんたむれんじゅ」「酒とめし どんたむれんじゅ」     同じ場所で昼と夜は違う顔の店になる

まーなび第1回結果

 去年のイベントですが「トークショー型市民講座まーなび」、その第1回の様子を紹介します。

 

 ゲストは、30年位前からお世話になっている佐々木昌治さん。

 私にとってもカミさんにとっても、木や森、自然に関する先生ですし、生き方についてもそうですね。

 

 まーなびは、私が進行役になってゲストとやりとりしながら進めていくものです。

 第1回のテーマは、美笛キャンプ場へのアプローチにある巨木の森を題材にして、高度経済

成長〜バブルを経由して、そして今も私たちがずっと失い続けているものは何かを考えてみる

というものでした。

 

巨木の森 元々のカツラの大木は朽ち、萌芽が大きく成長している

 当日の内容の一部を抜粋して紹介します。

 なお、まーなびは基本的に月1回開催し、その結果を年度毎にまとめて簡単な冊子にして発

表する予定(有料)なので完成したら公表します。

 

 

 

司会 ところで、佐々木さんのお話は森林計画とか経済的なものの見方とか営林署の職員とし

  ての視点と市民側というか自然を愛してる人の立場からの視点と両方ある。環境保護活動

  のみだと行政の動きとかそういう視点はなかなかないですけど、そういう点も踏まえた上

  で話をしてくださったのはすごく楽しかったなと思っています。

   では、本題ですけれど、今日は美笛のキャンプ場の手前にある地帯「巨木の森」と言わ

  れているところです。(手元のフリップを指しながら)ここがキャンプ場で、この緑の濃い

  部分が人工林です。色の浅い部分が天然林なんですけれど、これがどういう構成になって

  いるとかもお話していきますが、まず初めに佐々木さんが主に歩いてきた樽前山麓の森林

  の特徴をちょっと教えて頂けますか。

佐々木 一口で言えばね、昭和29年の洞爺丸の台風で倒されたあとの復興造林。緑をよみがえ

  らせるための政策が行われた地域なんですよね。色々な木を植えて森を作っていった。

   そして平成18年、洞爺丸台風から大体70年くらい経った後にまたあの台風に匹敵するよ

  うな風倒があったわけです。だからなぜそんなことにななったかっていうやつをね、考え

  ていかなくちゃならないですよね。この辺の伐採っていうのはね、明治36年くらいから始

  まっているんですよ。王子製紙の創業が41年でしょ。それに合わせて木材が切り出されて

  いくわけ。で、主に樽前山麓と社台の上の方のやつを切ってね、パルプの原料にしたんで

  すよね。それで、洞爺丸の台風で倒れた時に神風だって言って喜んだのがパルプ業界なん

  ですよね。

司 会 切らなくても倒れてくれてる。

佐々木 その後、朝鮮動乱って言ったら昭和25年から29年ですか。その時の三白景気って日本

  の戦後の経済復興を果たした要因がね、砂糖とセメントとパルプなんですね。パルプが必

  要だったんで木材をどうやって手に入れるかっていうのが課題だったんです。倒れてくれ

  て喜んだんだけど、旭川の方でも倒れたんだけど、そんなの微々たるものなんだよね、パ

  ルプ業界としては ね。それで、どうやって木材を確保するかというのが、のちのち問題に

  なる広葉樹を切って針葉樹林に切り替えるっていう政策になる。なんか、分かりにくい?

司 会 いいえ。洞爺丸台風の時に倒れたのは針葉樹がやっぱり多い?

佐々木 多く倒れたところは針葉樹が多く含んでるところ。広葉樹のところってのはね、割合

   ね倒れていないんですよ。

 


司 会 こんな感じで、人工林の方は人の計算で作られて、それを守るために天然林が残され

  て。 残された天然林の中で大きく育った物が残り。人工林の時間の経ち方っていうか人間

  が考える時間の流れと天然林の人間があまり関知しない部分の時.間の流れの差...なんてい

  うんでしょうね、そこの違いみたいなものがあると思うんですよね。

佐々木 それがね、今日の結論にしようと思ってたやつ。

司  会 (笑)そうですか。じゃあもうちょっと取っておきますか。じゃあそのあたりの方に入

  る前に。人工林の方に選ばれた材。例えばトドマツ、エゾマツ、それからカラマツ。カラ

  マツは北海道の木じゃないですよね。なんでカラマツが選ばれたかっていうのを知りい。

佐々木 さっき言った成長率何%って話したよね、それねカラマツの成長率はすごく大きくて

  12%もあるんだよ。天然林は2%くらいでね、だから10%くらいの違いがあるわけ。

司 会 はい。

佐々木 だからその10%多く切れるわけでしょ。ですからカラマツを入れたわけよね。どっか

  ら持ってきたかって言ったら信州です。長野。

司 会 どんたむ焼きのふるさと(笑)。

佐々木 北海道には元々カラマツはないんですよね。で、北の方行ったらグイマツというカラ

  マツの親戚みたいのがあるんですけど。そのカラマツを持ってきて植えた。それはやっぱ

  りその経済効率の話なんですけど、材の確保。王子に...パルプ業界に恨みを持ってるわけ

  じゃないんだけど、とにかく林業政策ってのとそういう話をしないとね、説明として合わ

  ない。

 

 

司 会 カラマツを入れることのおかしさとか矛盾点とかそういうところに気付いたのはどの

  ような仕事をした時からですか?

佐々木 造林調査をやる前からそうなんだけど、カラマツ植えてから最初の何年かはすごく成

  長良いんですよ。なんでその後成長が悪くなるかってったら、やっぱ土壌養分の関係なん

  ですよね。ここは火山灰が降って、それが積もって。そして1年に1ミリくらい土が出来て

  くる、そういう条件の中で育ってるわけです。最初の成長が良いのはそこが元々持ってる

  養分を吸っちゃうから。それですぐに土地が痩せちゃうわけでしょ。だから成長が悪くな

  るからいろんな病気がつくわけ。1番大きかったのは先枯れ病って言って木の先端の部分が

  枯れちゃう。先端が枯れちゃったら横から出るけど横から出たやつもみんな枯れちゃう。

  だから林にならない。それで植えられたカラマツのおそらく70%くらいは別の木にまた植

  え替えられたと思いますよ。

司 会 テストする期間とかなかったんですかね、長野から持ってきて北海道に植えて良い、

  育つのかっていう。

佐々木 いい加減なんだなそれがね。例えば痩せ地に耐えますって言ったら痩せ地に育つって

  読むんだよね。それから風に強いですって言ったってね、風ったってそよ風とね、ここら

  辺は30mくらいの風が5年にいっぺんくらい来てるわけでしょ。そしたら持つわけないん

  だよね。

司 会 そういうね、自分の仕事の中での矛盾してるところっていうのに気づき始めたのはい

  くつくらいからなんですか?

佐々木 裏返せば、気付いたのに何で何もしてなかったんだよって?

       会場 笑

司 会 いやそれはどの仕事でもあるので。でも今思うと言えるんじゃないかなって。

佐々木 まあ今日は懺悔だと思ってるから(笑)。やっぱり中に入ったら言えない。1つの路線で

  全国的にこうやろうってずっとやってるわけでしょ、その中で一職員が言えるわけない。

司 会 どの仕事をやった時に「はて?」と思ったのかなと思ったんです。

佐々木 造林調査っていう、現場を見て回り出してから。

司 会 そこもちょっと聞きたかったところです。市役所の仕事もどんどん民間の方に流され

  ていって、現場知らない職員が増えてくる。そうすると机上の理論だけで仕事するように

  なってしまって。今は外に(民間に)仕事を出してっていうんだけど、現場に行って気づく

  ことができなくなることもあるって、 佐々木さんの話を聞いてそう思ったりもして。

   ちょっと話が横にずれましたが、こんな感じでこう樹木があそこは立派に育っていって

  いる。あそこは財産なんですよね、本当にね。あそこの森林をどんな風にみんなに見てほ

  しいとかっていうのはありますか? あそこだけじゃなくても。
佐々木 やっぱりああいう大きな木の中でね、自然のことをいっぱい色々考えてもらえば良い

  なあと思うしね、逆に人工林との比較をすりゃ良いしさ。人工林...さっきちょっと話した

  けど、根張りの面積を多く取ってやらないとならないって話をしましたよね。間伐ってい

  う仕事があるんです。抜き切り。抜き切りが十分にされてないんですよね。だから根が生

  えるだけのスペースがないから倒れやすい。だから言ってみればずんぐりむっくりの木を

  作るのがこの辺では最適なんだ。だ けど(計画上で)みんな計算されるのはこういう劣悪な

  土壌のところじゃなくて、良いところの土壌で作られたいろんな資料が使われて「こうな

  るはずだ」が実行されていくんですよね。

   この辺の特徴は?っていう話さっきあったけど、樽前山麓のそういう平坦地っていうか緩

  斜地っていうのはね、寒さがかなりきついんですよ。ちょっとした窪みのあるところで低

  温が停滞するんですよね。だからこの辺の山を色々観察すれば、どこ行っても適応出来

  る。そういう条件ってのがあるんですよ。そういう中ででっかい面積の林を作ってきたっ

  ていうわけね。それで全部失敗して。本当はほとんど失敗です。そして自然に出た広葉樹

  と一緒に育ったところが今良い山になってる。アッペナイの奥の方に信金の森っていうの

  があるんですよ。あそこはエゾマツを最初植えて、失敗してそのままにしたところ。そし

  たら今はねミズナラとエゾマツが混合して良い山になってます。

司 会 そういう風に、手を加えても失敗したからってその後あんまり手を加えな かったとこ

  ろ。そこは。

佐々木 さっき言った森林の話になるけど、要するに人間焦りだの、忙しいんだよね。自然と

  の付き合いの中で10年、20年とかの単位で見るわけでしょ。100年とかさ、そういう長い

  スパンで見ていかないと。十哩の近くにね、洞爺丸の台風で倒れた木を一切出さないでそ

  のままにして、その後 森林がどう出来てるかってそういう試験やってるところがあるんで

  す。そこはすごく良い林になってます。だから、急ぎ過ぎてすぐ木植えたりしなくてその

  ままにした方が。カラマツ植えるのにどうしたと思います? カラマツってネズミに弱いん

  ですよね。ネズミに弱いから植えるときにここに一定の面積、大きな面積を中を全部焼い

  ちゃうわけです。小さい木が育ってたのもみんな焼いちゃったんですよね。そうしてネズ

  ミが住めなくして、周りに40~50cmくらいの溝をずーっと掘ってそして中にカラマツを

  入れたものなの。そしてイタチもわざわざホンドイタチを持ってきてね、そしてネズミ捕

  りをやらせたわけでしょ。でもそれも全部失敗。だってねそんな簡単にね。

 

 

司 会 なるほどね。では、さっき佐々木さんがそれが最後の話になるんだって言っていた、

  そういうことから見えてくることというのは結論を急ぎすぎてきたっていうところ?

佐々木 そう。

司 会 でも、今どんどんどんどん早くなってるじゃないですか。私たちの感覚っていうか。

  とにかく早く。すぐに。

佐々木 俺ね、森林も...ちょっと学校教育なんておこがましい話になっちゃうけど、あれもち

  ょっと急ぎすぎじゃない? みんな目標決められてそこに達してるかどうかなんて毎年やっ

  てるでしょあれ。やっぱり人間の活動する期間と自然の期間と違うんだよね。今になって

  こんなこと言うのおかしいけど、だから懺悔って言ったんですよ(笑)。 

   だから長い時間かけてじっくりやっぱり取り組んでいかないと。

   1つだけ紹介しておきますけど千歳から支笏湖行く道路。両側に森林帯ずーっと残ってる

  でしょ。あれ設計したのが昭和4年の時なんですよ。森林施業計画っていうのがあって、

  その中であそこは切らないで残すことになっ てる。あそこと樽前の登山道の両側、それに

  苫小牧から支笏湖の両側もそうなんだけど、こっちの方はほとんどなくなってるでしょ。

  あれはそこだけを残しても周りが切られてしまうとやっぱり弱いからなんですよね。だか

  ら結局はなくなっちゃう。支笏湖の通りなんていい通りですからね。見たらああこんな、

  ここかなっていうように見てください。良いところです。

司 会 ありがとうございました。

 

 会場 苫小牧市花園町「どんたむれんじゅ」